SUMMARY
- マットレスは「中くらいの硬さ」が良いとする研究が多い。ただし硬さの基準は研究ごとに違い、最終的には本人の感覚が頼り
- 重い掛け布団は、精神疾患のある不眠の人で効果を示した試験がある。一方、まとめた解析では不眠の改善に有意差が出なかった
- 耳栓やアイマスクの根拠は主に集中治療室(ICU)のもの。騒がしい環境では役立つが、静かな寝室での効果ははっきりしない
- 枕やリカバリーウェアで睡眠の質が上がるという根拠は、まだ弱い
このサイトでは、マットレスや枕などの寝具を紹介しています。だからこそ、その効果が研究でどこまで確かめられているかを、正直にお伝えしたいと考えました。結論を先に言えば、寝具の研究は、カフェインや光の研究ほど強い根拠がそろっていません。そのうえで、選ぶときに参考になる知見を整理します。
マットレスの硬さと睡眠:「中くらい」の根拠と限界
マットレスの硬さについては、比較的まとまった研究があります。
中くらいの硬さの群は、硬い群に比べて改善した人の割合が高くなりました。寝ているときの痛みは約2.4倍、日常の動作の不自由さは約2.1倍です。「腰痛には硬いマットレス」という昔の常識とは違う結果でした。ただしこの試験は、柔らかいマットレスとは比べていません。対象も腰痛のある人で、睡眠の質は主な評価項目ではありませんでした。
2000年以降の対照試験24本をまとめた系統的レビューでは、次のように結論づけています。本人が「中くらいの硬さ」と感じ、空気圧などで硬さを自分で調整できるマットレスが、快適さ、睡眠の質、背骨の並びにとって最も良いというものです[2]。39本の論文を見直した別のレビューも、中くらいの硬さを勧めています[3]。

GEAR — マットレス
NELL マットレス寝返りのしやすさに着目したポケットコイルのマットレス。お試し期間を設けているので、硬さが自分に合うかを自宅で確かめたい人に向いています。条件は公式サイトで確認してください。
公式サイトを見る重い布団(ウェイトブランケット)は不眠に効くか
重い布団の群では、不眠の重さの点数が大きく改善しました。12か月後の追跡でも効果が続いていました。中国の不眠症の成人102人を対象にした予備的な試験でも、睡眠の質の点数は重い布団の方がよく改善しました。ただし、腕時計型の機器で測った夜中の目覚めの回数には、差がありませんでした[5]。
一方、2024年に8つの試験・426人をまとめたメタ解析では、不眠の重さについて統計的に有意な差は出ませんでした。不安を和らげる効果も小さく、試験の半数は偏りのリスクが高いと評価されています[6]。

GEAR — ウェイトブランケット
ハグラビ6.8kgと9kgから選べる重い掛けふとん。研究で示された効果は限られた人を対象にしたものです。包まれる感覚が好きかどうかで選んでください。重いので、体の小さな人や高齢の人は軽い方を選ぶのが無難です。
公式サイトを見る耳栓・アイマスクと睡眠:騒がしい環境なら意味がある
騒音が眠りを妨げることには、比較的しっかりした根拠があります。WHOのガイドラインのために行われた系統的レビューでは、夜間の交通騒音が10デシベル上がるごとに、「眠りがひどく妨げられている」と答える人が増えていました。寝ている間の室内の最大騒音が10デシベル上がるごとに、目が覚める確率は約1.35倍になりました[7]。WHOは、寝室の中の騒音を30デシベル未満にすることを目安として示しています[8]。
耳栓やアイマスクの研究は、主に集中治療室(ICU)の患者を対象にしています。30の試験をまとめたコクランレビューでは、耳栓やアイマスクでせん妄が減り、睡眠時間が延びる傾向がありました。ただし根拠の質は「低い」とされています[9]。健康な人40人にICUの騒音と光を再現した部屋で眠ってもらった実験では、耳栓とアイマスクで夜中の目覚めが減り、寝つきも早くなりました[10]。

枕・パジャマ・リカバリーウェアと睡眠:根拠はまだ弱い
枕については、慢性的な首の痛みがある人を対象にしたメタ解析があります。ゴム(ラテックス)やスプリングの枕で首の痛みはわずかに減りましたが、睡眠の質には差がありませんでした[11]。「枕で睡眠の質が上がる」と言える根拠は、まだ十分ではありません。首や肩に痛みがある人が、楽な姿勢を探すための道具と考えるのが妥当です。
パジャマやリカバリーウェアの研究は、さらに限られています。
- 素材と睡眠についての系統的レビューに含まれた研究は9本のみ。研究の方法がまちまちで、比べることができなかった。著者は羊毛の業界団体から資金を受けていた[12]
- 遠赤外線パジャマの予備的な比較試験では、睡眠の質の点数が、効果のない見せかけのパジャマ(プラセボ)と変わらなかった[13]
効果を示した小規模な研究もありますが、多くはメーカーの支援を受けた十数人規模の短期の試験です。寝る前にゆったりした服に着替えることは、毎晩の「眠りの合図」として役立つかもしれません。ただ、特定の素材で睡眠が良くなるとは言えないのが現状です。
睡眠グッズの研究、根拠の強さ一覧
| 主張 | 根拠 | おもな研究 |
|---|---|---|
| 中くらいの硬さのマットレスは、腰痛のある人に硬いものより良い | 根拠 中 | [1]。質の高い試験だが1本 |
| 中くらいの硬さのマットレスが睡眠の質に良い | 根拠 中 | [2][3]。硬さの定義がまちまち |
| 夜間の騒音は眠りを妨げる | 根拠 強 | [7][8] |
| 重い掛け布団で不眠が改善する | 根拠 弱 | [4][5][6]。対象が限られ、メタ解析では有意差なし |
| 耳栓・アイマスクで眠りが良くなる | 根拠 弱 | [9][10]。主にICUの研究 |
| 枕・リカバリーウェアで睡眠の質が上がる | 根拠 弱 | [11][12][13] |
研究から導ける、睡眠グッズの選び方
- 寝具より先に、光、入浴、カフェイン、起きる時刻など、根拠の強い習慣を整える
- マットレスは「中くらい」を出発点に、自分の体で確かめる。お試し期間や返品の条件を確認する
- 騒音がある寝室なら、耳栓は手軽で試す価値がある
- 「睡眠の質が◯%上がる」といった宣伝は、誰を対象に、誰がお金を出した研究かを確かめる
トップページの眠りの道具では、マットレス、枕、静けさ、朝のリズムの4つに分けて商品を紹介しています。
参考文献
- Kovacs FM, Abraira V, Peña A, et al. Effect of firmness of mattress on chronic non-specific low-back pain: randomised, double-blind, controlled, multicentre trial. Lancet. 2003;362(9396):1599-604. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14630439/
- Radwan A, Fess P, James D, et al. Effect of different mattress designs on promoting sleep quality, pain reduction, and spinal alignment in adults with or without back pain; systematic review of controlled trials. Sleep Health. 2015;1(4):257-67. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29073401/
- Caggiari G, Talesa GR, Toro G, et al. What type of mattress should be chosen to avoid back pain and improve sleep quality? Review of the literature. J Orthop Traumatol. 2021;22(1):51. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34878594/
- Ekholm B, Spulber S, Adler M. A randomized controlled study of weighted chain blankets for insomnia in psychiatric disorders. J Clin Sleep Med. 2020;16(9):1567-77. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32536366/
- Yu J, et al. Effect of weighted blankets on sleep quality among adults with insomnia: a pilot randomized controlled trial. BMC Psychiatry. 2024;24:765. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39501163/
- Zhao Y, et al. Safety and effectiveness of weighted blankets for symptom management in patients with mental disorders: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Complement Ther Med. 2024;87:103104. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39447684/
- Basner M, McGuire S. WHO Environmental Noise Guidelines for the European Region: A Systematic Review on Environmental Noise and Effects on Sleep. Int J Environ Res Public Health. 2018;15(3):519. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29538344/
- World Health Organization Regional Office for Europe. Noise (fact sheet). https://www.who.int/europe/news-room/fact-sheets/item/noise
- Hu RF, Jiang XY, Chen J, et al. Non-pharmacological interventions for sleep promotion in the intensive care unit. Cochrane Database Syst Rev. 2015;CD008808. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26439374/
- Huang HW, Zheng BL, Jiang L, et al. Effect of oral melatonin and wearing earplugs and eye masks on nocturnal sleep in healthy subjects in a simulated intensive care unit environment. Crit Care. 2015;19:124. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25887528/
- Chun-Yiu JP, et al. The effects of pillow designs on neck pain, waking symptoms, neck disability, sleep quality and spinal alignment in adults: a systematic review and meta-analysis. Clin Biomech. 2021;85:105353. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33895703/
- Li X, Halaki M, Chow CM. How do sleepwear and bedding fibre types affect sleep quality: A systematic review. J Sleep Res. 2024;33(6):e14217. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38627879/
- Chen SC, et al. Improving Sleep with Far-Infrared-Emitting Pajamas: A Pilot Randomized Controlled Trial. Int J Environ Res Public Health. 2023;20(5):3870. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36900881/
本記事は公開時点の研究をもとに編集部がまとめたもので、医療上の助言ではありません。眠れない状態が続く、日中の強い眠気がある、いびきや呼吸の停止を指摘されたなどの場合は、医療機関に相談してください。


