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COLUMN 03

朝の光と夜のスマホは、睡眠リズムをどう動かすか

公開 2026-11-03約6分で読めます参考文献 14件本ページはプロモーション(広告)を含みます

SUMMARY

  • ヒトの体内時計の周期は平均約24.2時間。「25時間」は光の管理が甘かった古い実験から広まった
  • 同じ光でも、明け方より前に浴びると時計は遅れ、後に浴びると早まる
  • 夜の明るい画面は寝つきとメラトニンに影響する。ただ、ナイトモードだけでは差が出なかった試験もある
  • 効いているのは「青い色」より、目に入る光の量。寝る3時間前からは部屋の明かりを落とすのが確実

「人の体内時計は25時間なので、毎朝光を浴びてリセットしよう」。よく聞く説明です。ところが、この「25時間」は現在の研究では支持されていません。この記事では、体内時計と光についての実験研究を、数字と条件まで含めて読み解きます。

体内時計の周期は「25時間」ではなく約24.2時間

1960〜80年代、時計も窓もない部屋で生活してもらう隔離実験が行われました。そこでは、睡眠と覚醒の周期が平均で約25時間と報告されていました。しかし、こうした実験では、被験者が好きなときに照明をつけられました。夜に浴びた光が、体内時計を後ろへずらしていたのです。

1999年、光を厳密に管理した実験で測り直したところ、体内時計そのものの周期は平均24.18時間でした。若い人と高齢者でほぼ同じでした[1]。2011年に157人を調べた研究でも、平均は24.15時間でした。女性(24.09時間)は男性(24.19時間)より少し短く、女性の35%は周期が24時間より短いことも分かりました[2]。

ここから言えることずれは1日あたり平均10分ほどです。小さく見えますが、放っておくと少しずつ夜型にずれていきます。毎朝の光は、このずれを小さく直し続ける役目を担っています。

朝の光で睡眠リズムが整う理由:光を浴びる時刻で体内時計は動く

光が体内時計に与える影響は、浴びる時刻によって正反対になります。これを「位相反応曲線」と呼びます。

EXPERIMENTKhalsa ほか(2003, Journal of Physiology)21人に、約1万ルクスの明るい光を6.7時間浴びてもらった。体温が最も低くなる時刻(おおむね明け方)より前に浴びると時計は遅れ、後に浴びると早まった。最も遅れた場合と最も早まった場合の幅は、合わせて約5時間だった[3]。

1時間だけ光を浴びた実験でも、約2.2時間の幅で時計が動きました。光を浴びた時間は6.7時間の実験の15%なのに、効果は約40%ありました[4]。長く浴びなくても、タイミングが合えば光はよく効くということです。

光を浴びる時刻と、体内時計の動き(模式図)

早まる(朝型へ) 遅れる(夜型へ) 日中夜〜深夜明け方朝 体温が最も低い時刻

研究[3][4]の位相反応曲線の形をもとに、編集部が簡略化して描いた模式図です。日中の光の影響は比較的小さく、夜〜明け方前の光は時計を遅らせ、明け方以降の光は早めます。

寝る前のスマホと睡眠:メラトニンと寝つきへの影響

夜の画面の影響を調べた研究として最もよく引用されるのが、2015年の実験です。

RCT(CROSSOVER)Chang ほか(2015, PNAS)12人が、寝る前の約4時間、5晩続けて読書をした。光る電子書籍端末(最大輝度)で読む条件と、紙の本で読む条件の両方を全員が試した[5]。
指標電子書籍端末紙の本
寝つくまでの時間25.7分15.8分
メラトニンの分泌55%抑えられた—
メラトニンが出始める時刻22:3121:01
翌朝の目覚め覚醒度が低い—

ただし条件は厳しめです。最大輝度で毎晩4時間使い、紙の本は非常に暗い部屋で読んでいました。ふだんのスマホ利用でここまでの差が出るとは限りません。

夜の光への反応には、大きな個人差もあります。55人を調べた研究では、メラトニンを半分に抑える明るさは、集団で見ると約25ルクスでした。これは普通の部屋の照明程度です。一方で、個人では6ルクスから350ルクスまで、50倍以上の差がありました[6]。

ブルーライト対策とナイトモードは効くのか

画面の色を暖色にする「ナイトモード」は、ブルーライト対策として広く使われています。しかし、効果を確かめた研究の結果は限られています。

一方、72人の実験では、見た目の明るさや色は同じまま、体内時計に効く成分(メラノピック)だけを変えた光で比べています。体内時計に効く成分が多いほど、寝つきが遅れ、メラトニンが強く抑えられました[9]。

いま言えること問題は「青い色」そのものというより、目に入る光の総量と体内時計に効く成分です。色を変えるだけより、画面を暗くする、使う時間を減らす、部屋の照明を落とす方が確実です。

専門家グループによる2022年の提言では、体内時計に効く明るさの目安が示されています[10]。

時間帯体内時計に効く明るさの目安イメージ
日中250ルクス以上明るい窓辺や屋外。曇りの屋外でも数千ルクスある
寝る3時間前から10ルクス以下間接照明やスタンドだけの薄暗さ
寝室で眠っている間1ルクス以下ほぼ真っ暗

表の数値は、ふつうの照度計で測るルクスとは少し違う単位(メラノピックEDI)です。目安として捉えてください。

光目覚まし時計の効果:夜明けを再現する研究

起きる時刻に向けて少しずつ明るくなる「光目覚まし」の研究もあります。朝起きるのが苦手な人を対象にした在宅の実験では、寝起きのぼんやり感が軽くなりました。ただし、体内時計そのものが早まる効果は確認されませんでした[11]。8人の小さな試験では、起床前30分かけて明るくすると、睡眠の質の評価や起床後の反応速度が少し良くなりました[12]。

まとめると、光目覚ましは「すっきり起きる助け」としては期待できます。一方、体内時計を大きく動かす効果は、まだはっきりしません。研究の規模も小さいので、効果は控えめに見ておくのが妥当です。

平日と休日の睡眠リズムのずれ「社会的時差ボケ」

平日は目覚ましで早く起き、休日は遅くまで寝る。この平日と休日の睡眠時刻のずれを、ドイツの研究者は「社会的時差ボケ」と名付けました。毎週、時差のある場所を往復しているのと同じだという考え方です。夜型の人ほどずれが大きく、平日に睡眠不足がたまりやすいことが報告されています[13]。大規模な調査では、睡眠時間とは別に、ずれが大きい人ほどBMIが高い傾向も見られました[14]。どちらも観察研究なので、因果関係までは分かりません。

光と睡眠の研究、根拠の強さ一覧

主張根拠おもな研究
体内時計の周期は平均約24.2時間根拠 強[1][2]
朝の光は時計を早め、夜の光は遅らせる根拠 強[3][4]
夜の明るい画面は寝つきとメラトニンに影響する根拠 中[5][6][9]。条件が強い実験が多い
ナイトモードで影響を防げる根拠 弱[7][8]。差が出なかった試験がある
光目覚ましで寝起きが楽になる根拠 弱[11][12]。小規模

研究から導ける、睡眠リズムを整える光の使い方

  1. 起きたら早めに明るい光を浴びる。窓辺や屋外なら短時間でも効く
  2. 寝る3時間前からは部屋の照明を落とし、間接照明にする
  3. 寝る前の画面は、色を変えるより「暗くする・短くする」
  4. 休日も起きる時刻を平日から大きくずらさない(目安は1〜2時間以内)
光目覚まし時計 トトノエライト プレーン

GEAR — 朝の光

光目覚まし時計 トトノエライト プレーン

起きる時刻に合わせて光で知らせる目覚まし時計。研究から期待できるのは「寝起きを楽にする助け」までです。冬の暗い朝や、北向きの部屋で光を浴びにくい人に向いています。

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参考文献

  1. Czeisler CA, Duffy JF, Shanahan TL, et al. Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker. Science. 1999;284(5423):2177-81. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10381883/
  2. Duffy JF, Cain SW, Chang AM, et al. Sex difference in the near-24-hour intrinsic period of the human circadian timing system. PNAS. 2011;108 Suppl 3:15602-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21536890/
  3. Khalsa SB, Jewett ME, Cajochen C, Czeisler CA. A phase response curve to single bright light pulses in human subjects. J Physiol. 2003;549:945-52. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12717008/
  4. St Hilaire MA, Gooley JJ, Khalsa SB, et al. Human phase response curve to a 1 h pulse of bright white light. J Physiol. 2012;590:3035-45. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22547633/
  5. Chang AM, Aeschbach D, Duffy JF, Czeisler CA. Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness. PNAS. 2015;112(4):1232-7. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25535358/
  6. Phillips AJK, Vidafar P, Burns AC, et al. High sensitivity and interindividual variability in the response of the human circadian system to evening light. PNAS. 2019;116:12019-24. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31138694/
  7. Duraccio KM, Zaugg KK, Blackburn RC, Jensen CD. Does iPhone night shift mitigate negative effects of smartphone use on sleep outcomes in emerging adults? Sleep Health. 2021;7:478-84. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33867308/
  8. Nagare R, Plitnick B, Figueiro MG. Does the iPad Night Shift mode reduce melatonin suppression? Light Res Technol. 2019;51:373-83. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31191118/
  9. Schöllhorn I, Stefani O, Lucas RJ, et al. Melanopic irradiance defines the impact of evening display light on sleep latency, melatonin and alertness. Commun Biol. 2023;6:228. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36854795/
  10. Brown TM, Brainard GC, Cajochen C, et al. Recommendations for daytime, evening, and nighttime indoor light exposure to best support physiology, sleep, and wakefulness in healthy adults. PLoS Biol. 2022;20:e3001571. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35298459/
  11. Giménez MC, Hessels M, van de Werken M, et al. Effects of artificial dawn on subjective ratings of sleep inertia and dim light melatonin onset. Chronobiol Int. 2010;27:1219-41. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20653451/
  12. Thompson A, Jones H, Gregson W, Atkinson G. Effects of dawn simulation on markers of sleep inertia and post-waking performance in humans. Eur J Appl Physiol. 2014;114:1049-56. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24509892/
  13. Wittmann M, Dinich J, Merrow M, Roenneberg T. Social jetlag: misalignment of biological and social time. Chronobiol Int. 2006;23:497-509. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16687322/
  14. Roenneberg T, Allebrandt KV, Merrow M, Vetter C. Social jetlag and obesity. Curr Biol. 2012;22:939-43. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22578422/

本記事は公開時点の研究をもとに編集部がまとめたもので、医療上の助言ではありません。眠れない状態が続く、日中の強い眠気がある、いびきや呼吸の停止を指摘されたなどの場合は、医療機関に相談してください。