SUMMARY
- ヒトの体内時計の周期は平均約24.2時間。「25時間」は光の管理が甘かった古い実験から広まった
- 同じ光でも、明け方より前に浴びると時計は遅れ、後に浴びると早まる
- 夜の明るい画面は寝つきとメラトニンに影響する。ただ、ナイトモードだけでは差が出なかった試験もある
- 効いているのは「青い色」より、目に入る光の量。寝る3時間前からは部屋の明かりを落とすのが確実
「人の体内時計は25時間なので、毎朝光を浴びてリセットしよう」。よく聞く説明です。ところが、この「25時間」は現在の研究では支持されていません。この記事では、体内時計と光についての実験研究を、数字と条件まで含めて読み解きます。
体内時計の周期は「25時間」ではなく約24.2時間
1960〜80年代、時計も窓もない部屋で生活してもらう隔離実験が行われました。そこでは、睡眠と覚醒の周期が平均で約25時間と報告されていました。しかし、こうした実験では、被験者が好きなときに照明をつけられました。夜に浴びた光が、体内時計を後ろへずらしていたのです。
1999年、光を厳密に管理した実験で測り直したところ、体内時計そのものの周期は平均24.18時間でした。若い人と高齢者でほぼ同じでした[1]。2011年に157人を調べた研究でも、平均は24.15時間でした。女性(24.09時間)は男性(24.19時間)より少し短く、女性の35%は周期が24時間より短いことも分かりました[2]。
朝の光で睡眠リズムが整う理由:光を浴びる時刻で体内時計は動く
光が体内時計に与える影響は、浴びる時刻によって正反対になります。これを「位相反応曲線」と呼びます。
1時間だけ光を浴びた実験でも、約2.2時間の幅で時計が動きました。光を浴びた時間は6.7時間の実験の15%なのに、効果は約40%ありました[4]。長く浴びなくても、タイミングが合えば光はよく効くということです。
光を浴びる時刻と、体内時計の動き(模式図)
研究[3][4]の位相反応曲線の形をもとに、編集部が簡略化して描いた模式図です。日中の光の影響は比較的小さく、夜〜明け方前の光は時計を遅らせ、明け方以降の光は早めます。
寝る前のスマホと睡眠:メラトニンと寝つきへの影響
夜の画面の影響を調べた研究として最もよく引用されるのが、2015年の実験です。
| 指標 | 電子書籍端末 | 紙の本 |
|---|---|---|
| 寝つくまでの時間 | 25.7分 | 15.8分 |
| メラトニンの分泌 | 55%抑えられた | — |
| メラトニンが出始める時刻 | 22:31 | 21:01 |
| 翌朝の目覚め | 覚醒度が低い | — |
ただし条件は厳しめです。最大輝度で毎晩4時間使い、紙の本は非常に暗い部屋で読んでいました。ふだんのスマホ利用でここまでの差が出るとは限りません。
夜の光への反応には、大きな個人差もあります。55人を調べた研究では、メラトニンを半分に抑える明るさは、集団で見ると約25ルクスでした。これは普通の部屋の照明程度です。一方で、個人では6ルクスから350ルクスまで、50倍以上の差がありました[6]。
ブルーライト対策とナイトモードは効くのか
画面の色を暖色にする「ナイトモード」は、ブルーライト対策として広く使われています。しかし、効果を確かめた研究の結果は限られています。
- 18〜24歳の167人に、寝る前1時間のスマホ利用を7晩続けてもらった比較試験。「ナイトモードあり」「ナイトモードなし」「スマホを使わない」の3群で、睡眠に有意な差はなかった[7]
- タブレットのナイトモードで色を変えても、メラトニンの抑えられ方は変わらなかった。著者は、明るさを下げずに色だけ変えても不十分かもしれないとしている[8]
一方、72人の実験では、見た目の明るさや色は同じまま、体内時計に効く成分(メラノピック)だけを変えた光で比べています。体内時計に効く成分が多いほど、寝つきが遅れ、メラトニンが強く抑えられました[9]。
専門家グループによる2022年の提言では、体内時計に効く明るさの目安が示されています[10]。
| 時間帯 | 体内時計に効く明るさの目安 | イメージ |
|---|---|---|
| 日中 | 250ルクス以上 | 明るい窓辺や屋外。曇りの屋外でも数千ルクスある |
| 寝る3時間前から | 10ルクス以下 | 間接照明やスタンドだけの薄暗さ |
| 寝室で眠っている間 | 1ルクス以下 | ほぼ真っ暗 |
表の数値は、ふつうの照度計で測るルクスとは少し違う単位(メラノピックEDI)です。目安として捉えてください。
光目覚まし時計の効果:夜明けを再現する研究
起きる時刻に向けて少しずつ明るくなる「光目覚まし」の研究もあります。朝起きるのが苦手な人を対象にした在宅の実験では、寝起きのぼんやり感が軽くなりました。ただし、体内時計そのものが早まる効果は確認されませんでした[11]。8人の小さな試験では、起床前30分かけて明るくすると、睡眠の質の評価や起床後の反応速度が少し良くなりました[12]。
まとめると、光目覚ましは「すっきり起きる助け」としては期待できます。一方、体内時計を大きく動かす効果は、まだはっきりしません。研究の規模も小さいので、効果は控えめに見ておくのが妥当です。
平日と休日の睡眠リズムのずれ「社会的時差ボケ」
平日は目覚ましで早く起き、休日は遅くまで寝る。この平日と休日の睡眠時刻のずれを、ドイツの研究者は「社会的時差ボケ」と名付けました。毎週、時差のある場所を往復しているのと同じだという考え方です。夜型の人ほどずれが大きく、平日に睡眠不足がたまりやすいことが報告されています[13]。大規模な調査では、睡眠時間とは別に、ずれが大きい人ほどBMIが高い傾向も見られました[14]。どちらも観察研究なので、因果関係までは分かりません。
光と睡眠の研究、根拠の強さ一覧
| 主張 | 根拠 | おもな研究 |
|---|---|---|
| 体内時計の周期は平均約24.2時間 | 根拠 強 | [1][2] |
| 朝の光は時計を早め、夜の光は遅らせる | 根拠 強 | [3][4] |
| 夜の明るい画面は寝つきとメラトニンに影響する | 根拠 中 | [5][6][9]。条件が強い実験が多い |
| ナイトモードで影響を防げる | 根拠 弱 | [7][8]。差が出なかった試験がある |
| 光目覚ましで寝起きが楽になる | 根拠 弱 | [11][12]。小規模 |
研究から導ける、睡眠リズムを整える光の使い方
- 起きたら早めに明るい光を浴びる。窓辺や屋外なら短時間でも効く
- 寝る3時間前からは部屋の照明を落とし、間接照明にする
- 寝る前の画面は、色を変えるより「暗くする・短くする」
- 休日も起きる時刻を平日から大きくずらさない(目安は1〜2時間以内)

GEAR — 朝の光
光目覚まし時計 トトノエライト プレーン起きる時刻に合わせて光で知らせる目覚まし時計。研究から期待できるのは「寝起きを楽にする助け」までです。冬の暗い朝や、北向きの部屋で光を浴びにくい人に向いています。
公式サイトを見る参考文献
- Czeisler CA, Duffy JF, Shanahan TL, et al. Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker. Science. 1999;284(5423):2177-81. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10381883/
- Duffy JF, Cain SW, Chang AM, et al. Sex difference in the near-24-hour intrinsic period of the human circadian timing system. PNAS. 2011;108 Suppl 3:15602-8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21536890/
- Khalsa SB, Jewett ME, Cajochen C, Czeisler CA. A phase response curve to single bright light pulses in human subjects. J Physiol. 2003;549:945-52. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12717008/
- St Hilaire MA, Gooley JJ, Khalsa SB, et al. Human phase response curve to a 1 h pulse of bright white light. J Physiol. 2012;590:3035-45. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22547633/
- Chang AM, Aeschbach D, Duffy JF, Czeisler CA. Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness. PNAS. 2015;112(4):1232-7. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25535358/
- Phillips AJK, Vidafar P, Burns AC, et al. High sensitivity and interindividual variability in the response of the human circadian system to evening light. PNAS. 2019;116:12019-24. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31138694/
- Duraccio KM, Zaugg KK, Blackburn RC, Jensen CD. Does iPhone night shift mitigate negative effects of smartphone use on sleep outcomes in emerging adults? Sleep Health. 2021;7:478-84. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33867308/
- Nagare R, Plitnick B, Figueiro MG. Does the iPad Night Shift mode reduce melatonin suppression? Light Res Technol. 2019;51:373-83. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31191118/
- Schöllhorn I, Stefani O, Lucas RJ, et al. Melanopic irradiance defines the impact of evening display light on sleep latency, melatonin and alertness. Commun Biol. 2023;6:228. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36854795/
- Brown TM, Brainard GC, Cajochen C, et al. Recommendations for daytime, evening, and nighttime indoor light exposure to best support physiology, sleep, and wakefulness in healthy adults. PLoS Biol. 2022;20:e3001571. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35298459/
- Giménez MC, Hessels M, van de Werken M, et al. Effects of artificial dawn on subjective ratings of sleep inertia and dim light melatonin onset. Chronobiol Int. 2010;27:1219-41. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20653451/
- Thompson A, Jones H, Gregson W, Atkinson G. Effects of dawn simulation on markers of sleep inertia and post-waking performance in humans. Eur J Appl Physiol. 2014;114:1049-56. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24509892/
- Wittmann M, Dinich J, Merrow M, Roenneberg T. Social jetlag: misalignment of biological and social time. Chronobiol Int. 2006;23:497-509. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16687322/
- Roenneberg T, Allebrandt KV, Merrow M, Vetter C. Social jetlag and obesity. Curr Biol. 2012;22:939-43. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22578422/
本記事は公開時点の研究をもとに編集部がまとめたもので、医療上の助言ではありません。眠れない状態が続く、日中の強い眠気がある、いびきや呼吸の停止を指摘されたなどの場合は、医療機関に相談してください。


